収益物件・公共施設 : 004
愛媛県
設計 | 森垣知晃|rivet design office
施工 | 光と風スタジオ
撮影 | Nacasa & Partners Inc.
癒しをもたらす、心地よく過ごせる空間。
おだやかで美しい瀬戸内の海に囲まれた綿織物の産地愛媛県今治市にある老舗企業の本社敷地内にある社員食堂の建て替え計画。メイン通りから来社する際、敷地内で一番初めに目に入る立地であることから、仕事がイメージできるシンボリックな外装にしたいと考えた。そこで「織り込んで作る」をメッシュで表現しようと思い、建材として使われているエキスパンドメタルを採用する事となった。
エキスパンドメタルは国内外から多種サンプルを取り寄せ、透過度・折り型など一番やわらかな雰囲気になるものを選定。2階部分を全て包み込み、外観のアイキャッチとなるよう考えた。
また、「あたたかさ」や「やさしさ」もイメージに採り込みたいと思い、アプローチ外壁に米杉格子を、伸びやかに1階を囲う軒天にも米杉の羽目板を用いている。
1階エントランスホールは2階会議室を利用するお客様の待合空間も兼ねていると共に、会社の創業からの歩みを伝える写真を展示できるギャラリースペースにもなっている。
1階カフェテリアは3方をガラス張りとし、建物外周に植わる木々に囲まれることで森の中で食事しているような感覚で心地よく過ごせる空間を考えた。天気の良い日は深い軒下の屋外デッキ空間に座って自然の風を感じながらピクニック気分で食事も楽しむことができる。カフェテリアは社員が集まって研修するスペースとして、また、一般のお客様を招いて行う展示即売会の会場としても使う事を想定した多目的スペースでもある。
収益物件・公共施設 : 003
千葉県
設計 | 小島広行
撮影 | 小島広行
共生し融合する校舎
老川地区は山間部に位置し、養老渓谷という豊かな自然に恵まれた地域で、山の中腹のわずかに広がるスペースに谷底に養老川、崖をバックにして建つ「お山の学校」である。山間部ゆえ過疎化と少子化という深刻な問題に直面し、分校と統廃合を行うことから改築計画となった。
老川地区の住民は小学校を文化活動の拠点と捉え、学校に対する期待度は大きく「わが地区の学校」という意識が深い。改築工事に於いても、とても強力的であり地域のコミュニケーションは高いレベルで保たれている。これらの地域性存続させるためにも、脈々と続いてきた歴史を途絶えさせることなく将来へ継承するための場、地域の生涯学習の場、文化活動の拠点として機能するためにも、開放的で室内外の空間に連続性があり、地域の人々を受け入れ容易な施設づくりを目指した。
既存校舎2棟を取り壊しての計画である。
平面構成は、ふれあいコートを中心にシンボリックな多目的ホールを含む管理特別教室ブロック、南側に低学年クラスター、中学年クラスター、高学年クラスターと4つのブロックからなり、コミュニティモールにより、各ブロックを外部空間で連結することで、自然を感じとりながらの学習可能な計画とした。
ふれあいコートには、様々なコーブを設けることで児童の個性にフレキシブルに対応できる高いポテンシャルを備えた外部空間といえる。
地域文化との共生
多目的ホールは地域文化活動の中心施設となるべく、公民館的集会施設として位置づけられた。このスペースは、昼夜を問わず地域の発展のゾーンとし、地域の核・学校の中心として機能する空間である。よって、施設の中心に配置することで、児童と地域社会との結びつきを強固にする計画とした。
自然との共生
この小学校の児童動線の中心はふれあいコートと称する半囲み庭である。大自然に囲まれた学校の中に、人工的に造られた庭、ここは児童が自らの手で育み、また学習するスペースとして位置づけたい。各クラスターが、コミュニティモールと一体感を与え、いくつかのモールが創り出すシークエンスから自然の光景が垣間見られることで、内部空間と外部空間の連続性を高めている。
共生し融合する校舎
平面計画としては、「家」としての学校・「子供の居場所」としての空間を軸に、クラスター方式による施設構成とした。構造的にはハイブリット構造であり背後の崖が万一、崩壊した場合に備えて北側はRC構造とし、その他の部分は木造で構成している。地元産の杉材を多用し暖かみがあり、ぬくもりを感じることができる。施設全体を楽しげな雰囲気で包み込むために、様々なスペースを配置し児童にとって居心地の良い空間、お友達とおしゃべりができる場など、時々の状況や気持ちの変化にも見合う小空間が集団生活には必要不可欠と考えた。児童各自が、それぞれの自分の居場所を発見することで心のゆとりを高め、自分を見つめ、他人への思いやりを持った人格を育成する大切な空間を創造した。
豊かな自然に囲まれ、地域社会と融合し、皆がお互いに手を取り合って子供たちを健やかに育てる、そのような元気な学校をイメージした。機能的で使いやすく、創意工夫が発揮できる施設、子供たちの柔軟な発想に応える明るく楽しい空間、そして地域の人々に積極的に開かれた、深い愛着の湧く建築を創出した。
収益物件・公共施設 : 004
千葉県
設計 | 小島広行
撮影 | 小島広行
お城との対話を意図した小学校
徳川家康の命により本多忠勝が大多喜城を築城し、周辺地域の警護の拠点となった地である。街並みとしては、城下町の様相を呈しており、周辺環境との融合がテーマとなった。既存木造校舎4棟を取り壊し、体育館とプールを残した状況での改築計画である。限られたスペースの中で、如何に城下町の佇まいを表現できるか、又この地に相応しい学習環境を創造できるかの検証を行った。
設計手法としては、建物の中心軸(管理棟)を、お城に向け、この軸を中心に各クラスターを配置し展開することで、何処からでも大多喜城を意識可能な施設構成とした。分散させた各クラスター間は路地状空間を生み出し、城下町特有の集落的空間を表現した。
内部空間ついては、様々な教育スタイルにフレキシブルに対応可能な大小空間を随所に配置、児童たちのアクティビティを誘発できる種々のコーブが子供たちのストレスの回避と楽しい空間を提供した。
地域社会との融合という点から、多目的ホールは地域住民と合同イベントに活用可能な施設整備とした。
(多目的ホール・屋外劇場・屋外教室・屋外実習コーナー等)
『家』としての学校
児童は一日の大半を学校で過ごす。つまり学校は児童にとって学習の場であると同時に生活の場である。
そこで家庭生活の延長と捉え、クラスルームは「家」として認識できる形状とボリュウムとし住宅単位のスケールと設備を随所に取り入れて親しみがあり、生活が容易な構成を心掛けた。
「家」としての学校が大人の予期せぬ子供の行動や発見を生み出すことを期待して。
『子供の居場所』としての空間
周辺地域に散在する民家は、昔ながらの田の字プランであり、玄関を入ると土間があり、かまどが隣接し対象位置に田の字型の和室(4室)、その南側に縁側という形式が一般的である。
この施設のオープン形式のクラスルームと対比すると、襖の開閉がスライディングウォールの可動、縁側がお話コーナー、コミュニティの場がデンとして民家を呼応する形態とした。
また、縁側は外部に対して積極的に開放され、室内外の中間的領域を確立する。
これらの類似空間を現代的に発展させることで、地域の歴史的記憶を継承し、さらには新しく刻まれる児童の豊かな思い出となることを期待する。
オープンスペースにはヒエラルキーを与え大小の空間やスキップしたフロア等、隅っこのような囲まれた秘密基地のようなスペースは子供が大好きな空間だ。
隠れ家的感覚で、「お話コーナー」・「子供書斎コーナー」をデンと位置づけ、児童が、それぞれ自分の居場所を発見することで、心のゆとりを持ち、自分を見つめ、他人への思いやりを具えた人格を育成可能な空間として創出した。