医療施設 : 002
東京都板橋区
設計 | 岡部克哉
施工 | 三菱地所ホーム㈱ ソリューション事業部
撮影 | 平井宏行
大きな斜め天井の下で医療施設の潤いを考える
板橋区内の環状7号線から北に50m程度入ったところに建つ健診センターです。
住居系の用途地域なので、周囲は戸建て住宅や低層の集合住宅が建ち並んでいる住宅街となっています。
この住宅地の中に計画地となった約300坪の敷地があります。この敷地の中に築30数年のRC造地上3階建ての建物がありました。この1階・2階に入居していた健診センターから、手狭になったなどの要望を受け新たに30年の定期借家契約を結び、地主さんが建物を建て替える事になりました。
本計画はこのような背景の上に成り立っています。
朝、夕には、健診センターの駐車場には大小あわせると20台以上となる検診車が所狭しと並びます。
朝、健診に出かけた車が、夕方健診を終えて次々と健診センターに戻ってきます。
各々の健診車からは、採取した血液や撮影したレントゲンのフィルムなどが運び込まれます。
これを仕分けて、専門の各検査機関に検体を置くる配送センター、現像したX線フィルムから画像を読み込む読影室、健診の予約などを担うコールセンターなどの複合的な機能を持つ施設が今回我々の設計した健診センターという施設です。
大きや屋根の下にある3階の勾配(傾斜)天井となっている空間がこの建物の中で一番気持ちの良い場所になっています。高さ3.8Mほどの大きめの窓からは、板橋区や近隣区町村の街並みが広く見渡せます。
一般的に、大きなガラス面があると冷暖房の負荷があがりますが、この建物では軒の出を調整して負荷が高くなることを抑えています。
冬至・夏至・春分秋分の各時間帯に、この窓からどの程度の日射があるかをシミュレーションして、冬至では、日中直射日光が室内に落ちるようにして、夏至では午前10時以降は直射日光が室内に入らないように軒の出を設計して、建物の省エネルギー化を目指しています。
メインエントランスを入ると受付があり、その奥が待合室兼用のホールとなっています。
その空間の端に3階のラウンジに繋がるシースルーの階段とエレベータが配置されています。
EVの正面でもある階段の直ぐ外にはシンボルツリーとなる株立ちのシャラを植えました。
ホールとラウンジという開かれた2つの大きな空間をつなぐ階段やエレベータで建物を上下に移動する際に、上下階の空間のつながりを意識出来て建物一体感のようなものを感じてもらえ、少しでも建物を使う豊かさにつながる事を期待して設計しました。
健診センターという事もあり、衛生面に対する配慮も重要です。
「お手洗いは心の鏡」という考え方で、お手洗いには使い易さと清潔感を両立させるように配慮しました。
女性用では、お化粧直がし易いように照明計画に配慮し、手洗いにはへパフィルターの入ったエアドライヤ付きのダイソン製の水栓を導入し、衛生面での配慮と清掃性の良さを確保しました。
医療施設 : 003
神奈川県海老名市
設計 | 岡部克哉
施工 | ASJ西湘スタジオ
撮影 | 平井宏行 / hiroyukiHIRAI
文脈が無い都市に、インテリアで街並みに参加する
駅周辺で土地区画整理事業を伴う再開発が進む海老名駅からほど近いララポートの対面に位置するこの建物は小規模な医療モールとなっています。
設計当初は廻りに建物はほとんどない状態でしたが、建物が完成する頃には廻りの建物もある程度完成し、街並みらしきものが出来上がりつつありました。
1階に薬局と歯科医院、2階に保険診療を行う皮膚科、3階に自由診療を行う皮膚科が入っていて、2階と3階は同一の医療法人が運営しています。建物完成時には、1階の歯科医院はまだ入居が決まっておらず、我々は建物全体と、薬局、2・3階の皮膚科の内装までを設計監理しています。
2階、3階は同一の医療法人が運営しているので、一体感を持たせるために、2階の待合室を吹き抜けとして、3階の待合と空間的を連結しています。清潔感が要求されるクリニックですが、無味乾燥になりがちでもあるので、2・3階のクリニックでは、この吹抜けの待合にはクリニックのシンボルとなるような大きな樹木が配置して、少ししっとりとした癒しの効果を期待しました。室内に置かれる樹木は管理が難しく枯れてしまう事も多いので、ここでは天然の樹を乾燥させて特殊な加工をした擬木を採用しています。
この大きな擬木を中心とした待合室の室内の光景は、夕方になるとガラス越しに街並みに参加して、道を行きかう人々にこの建物の存在を主張しています。
吹抜けの上部には、遠隔操作で開閉できる窓を設け、春や秋の季節の良い時期には、エアコン無しでも心地よい風が流れるよう配慮しました。
2階に配置されたカウンセリングルームは小さい部屋なので、音が響きすぎて相手の話す声が聞き難くならないよう配慮しました。
床のタイルカーペットをはじめ、壁面の大谷石仕上げなど吸音性のある仕上げを選定したしている他、2重のローマシェードやファブリックのはられた椅子にするなど複数の要素を組合せて、心地よいコミュニケーションが出来る事を期待しました。
3階の皮膚科の患者さんは、開院当初2階で受付を済ませてから、3階に移動する患者動線になっています。
将来的には3階の患者さんは3階で受付が出来るように当初から、3階にも受付カウンターを設けています。
最近のクリニックでは、患者さんとクリニックスタッフの動線(廊下)を分ける動線分離型の間取りが採用される事が多いのですが、3階の自由診療エリアでは患者さんとスタッフの動線を分離せず、一体化する事により空間に余裕が生まれ、その余裕の部分に中庭を配置しました。
患者さんスタッフともに、中庭の周りを囲むようにレイアウトされた廊下から複数ある個室の処置室にアクセスします。
中庭には樹木が植えられ、季節感を演出すると同時に、自由診療エリアを重厚になり過ぎないで、明るい少し爽やかな印象の空間になるよう仕立てました。